年金は本当に減る?年金が減額されるボーダーライン
「年金をもらいながら働きたいけれど、収入が増えると年金が減るって聞くし…どこまでなら大丈夫なの?」
そんな不安や疑問を持つ人はとても多いです。
特に、60歳以降も会社員やパートとして働き続ける人が増えている今、
「在職老齢年金」の仕組みを知っておくことは、老後の家計を考えるうえでとても大事です。
仕組み自体は少しややこしく見えますが、
「どこがボーダーラインなのか」「何がどれだけ減るのか」
というポイントさえ押さえれば、難しい計算式をすべて理解しなくても大筋はつかめます。
1. なぜ「働くと年金が減る」仕組みがあるのか
まず前提として、在職老齢年金は
「働いて収入もある人に対して、年金と給与のバランスをとる」ための仕組みです。
・まったく働いていない人
・しっかり働いて給与を得ている人
この2つが同じように年金を満額もらうと、
「働いている人に年金を多く払いすぎてしまう」という面もあり、
制度全体のバランスをとる必要が出てきます。
そのため、
・一定以上の給料+年金がある人は、老齢厚生年金を一部調整する
・逆に、収入がそれほど多くない人は、基本的に減額はない
という考え方になっています。
2. 在職老齢年金の対象になる人
まず、「誰がこのルールの対象になるのか」を整理しておきましょう。
在職老齢年金の対象になるのは、次のような人です。
・老齢厚生年金を受け取る権利がある
・会社などで働いていて、厚生年金に加入している(被保険者である)
つまり、
・すでに老齢厚生年金が支給される年齢になっていて
・いまも会社員・公務員・パートなどで「厚生年金に加入中」
という人が対象です。
自営業やフリーランスなど、厚生年金に加入していない人は、在職老齢年金の調整は基本的に関係しません。
また、60〜64歳と65歳以上では本来のルールが少し異なりますが、
ここではわかりやすさを優先し、よく使われる「47万円ライン」での考え方に絞って説明します。
3. 年金が減額される仕組みの大枠
在職老齢年金では、次の2つの金額を合計して判定します。
1. 給料(標準報酬月額)
2. 年金(月々の老齢厚生年金額)
そして、
「給料(標準報酬月額)+老齢厚生年金の月額」が 47万円を超えたかどうかが、減額の出発点になります。
標準報酬月額って何?
標準報酬月額とは、
・毎月の給料
・通勤手当などの手当
をもとに、一定の幅ごとに区分した「年金用の基準となる月収」です。
実際の手取りそのものではなく、
「年金計算用の月収ランク」のようなものだと考えてください。
※細かい等級表はありますが、ここでは「だいたいの給料額」とイメージしてもらえれば大丈夫です。
4. ボーダーラインは「47万円」:ここから減額がスタート
仕組みをシンプルに言い換えると、
給料(標準報酬月額)+老齢厚生年金の月額 = 47万円を超えたら、その超えた部分の半分だけ年金が減る
というルールです。
逆に言えば、
・合計が47万円以内なら、原則として「減額はない」
・47万円を1円でも超えたところから、減額調整が入る
というイメージです。
5. 具体例でイメージしよう
数字だけ見てもピンとこないので、具体的なパターンで見てみましょう。
(ここでは、わかりやすくするために「標準報酬月額=おおよその月給」として考えています)
【例①】減額されないケース
給料:25万円
老齢厚生年金:15万円
合計:
25万円 + 15万円 = 「40万円」
→ 47万円以下なので、減額はありません。
この場合、
・働いて毎月25万円の給料を受け取り
・老齢厚生年金15万円もそのまま受け取れる
ということになり、給与と年金を合わせて「40万円」が手元に入ります。
【例②】少しだけ減額されるケース
給料:30万円
老齢厚生年金:20万円
合計:
30万円 + 20万円 =「50万円」
→ 47万円を「3万円オーバー」しています。
この「超えた3万円」の「半分」が、老齢厚生年金から差し引かれます。
3万円 ÷ 2 = 「1.5万円」
つまり、
「老齢厚生年金が1.5万円減額される」ということです。
結果的には、
本来の年金:20万円
減額:▲1.5万円
実際にもらえる年金:18.5万円
となり、
給料30万円 + 年金18.5万円 = 「48.5万円」が実際の手取りイメージです。
【例③】しっかり減額されるケース
給料:40万円
老齢厚生年金:20万円
合計:
40万円 + 20万円 =「60万円」
→ 47万円を「13万円オーバー」しています。
この「13万円」の「半分」が年金から差し引かれます。
13万円 ÷ 2 =「6.5万円」
したがって、
本来の年金:20万円
減額:▲6.5万円
実際にもらえる年金:13.5万円
となり、
給料40万円 + 年金13.5万円 = 「53.5万円」が実際の受け取りイメージです。
6. 47万円を超えると「何が」「どれだけ」減るのか
ここまでの例から、押さえておきたいポイントを整理します。
・減額の対象になるのは「老齢厚生年金の部分だけ」
老齢基礎年金(国民年金の部分)は原則として減額されません
・「給料+老齢厚生年金」が47万円を超えたとき
→ 「超えた金額の半分」が老齢厚生年金から引かれる
・給料が高くなればなるほど、
→ 合計額が大きくなり、「減額幅も大きくなる」
・給料がかなり高い場合は、
→ 計算上、老齢厚生年金がほとんど、あるいは「ゼロになるケース」もある
「年金がゼロになる」のは損なのか?
一見「せっかく年金もらえる年齢なのにゼロなんて損では?」と思うかもしれませんが、
・その分、給料収入が高い状態が続いている
・厚生年金保険料も支払い続けることで、「将来の年金額が増える可能性がある」
といった面もあります。
在職老齢年金で一時的に年金がカットされても、
「働いている期間が長い」「標準報酬月額が高い」人ほど、
将来的に年金額が再計算されて増える要素もあるため、
「長期的には一概に損と決めつけることはできません」
7. 「47万円ライン」を知るとできる工夫
このルールを知っておくと、次のような工夫がしやすくなります。
・給料と年金の合計が47万円付近になりそうな場合
→ 「少し勤務日数や残業を調整するかどうか」を検討できる
・年金を早めにもらうか、繰り下げるか決めるとき
→ 在職老齢年金でどの程度調整されるかを踏まえて考えられる
・夫婦で働き方を相談する際に
→ どちらがどの程度働くと世帯として有利かをイメージしやすい
また、実際の制度は、年齢(60〜64歳か、65歳以上か)によって細かい違いがあります。
自分の年齢・働き方・収入を前提に、具体的な数字を知りたい場合は、
・年金事務所に相談する
・会社の人事・総務に確認する
・社会保険労務士などの専門家に相談する
といった方法も有効です。
8. まとめ:まずは「給料+年金=47万円」を頭に入れておく
在職老齢年金の仕組みは一見複雑に思えますが、
日常的に意識しておきたいポイントは次の一つです。
「給料(標準報酬月額)+老齢厚生年金の月額が47万円を超えると、超えた分の半分だけ年金が減る」
そして、
・減るのは「老齢厚生年金だけ(老齢基礎年金はそのまま)」
・給料が高いほど、減額される金額も大きくなる
・条件によっては老齢厚生年金がゼロになることもある
という点を押さえておけば、
「どこまで働いて、どれくらい収入を得るか」を考えるときの、大きな目安になります。
老後の働き方は、「体力」「気力」「家計」のバランスが大切です。
47万円というボーダーラインを一つの目安にしながら、
無理のない働き方と、安心できる家計づくりを考えてみてください。